フォーミュラリーは薬剤へのアクセスにどれほど影響を与えているのか|DRG海外レポート

【AnswersNews   2021/01/26】 米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 フォーミュラリーが薬剤アクセスに与えている影響について、「ヒュミラ」や「キイトルーダ」など5つの薬剤で分析しました。

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(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

ヒュミラなど5剤を分析


2019年の米国の処方薬売上高を見てみると、「ヒュミラ」「エンブレル」「レブラミド」「イムブルビカ」「キイトルーダ」といった薬剤が上位を占めている(DRGの売り上げデータ)。これらの薬剤は、スペシャリティ医薬品であると同時に使用量が多く、民間保険のフォーミュラリー管理と薬剤アクセスの関係を把握するには、うってつけの分析対象だ。

われわれの分析から得られた結果のうち、特に注目すべきなのは次のような点だ。

▽薬剤へのアクセスの決め手となるのは、保険適用の内容より、事前承認や治療ステップを通じた使用の管理だと考えられる。
▽ヒュミラは、新たに7%のフォーミュラリーで「推奨」かつ「制限なし」と位置付けられており、それがエンブレルを上回るアクセスにつながっている。
▽キイトルーダの薬剤給付保険適用は2019年1月から25%縮小しているものの、適用範囲の制限は引き続きオプジーボよりも少ない。


TNF阻害薬


米国では、ヒュミラが全医薬品の中で売上高トップとなっており、先頭を走っている。ただ、バイオシミラーの参入が迫り、売り上げのピークが近付いている。エンブレルは長年、ヒュミラと市場で激しく競合しており、2019年の売上高は米国5位だった。

2020年12月現在、700を超える民間保険のフォーミュラリーで、ヒュミラはエンブレルより有利なポジションにある。さらに、ヒュミラの方が事前承認を要するケースが少なく、適用される使用管理ルールも少ない。位置付けも有利で制限も少ないため、ヒュミラはエンブレルをしのぐ売り上げを達成している。



ヒュミラもエンブレルも、基本的には薬剤給付プランでカバーされているが、医療給付プランでカバーされる場合もほとんど差はない。両剤とも、短期的にはバイオシミラー参入の影響を回避することに成功している。ただ、ほかの生物学的製剤のバイオシミラーやJAK阻害薬が、エンブレルの市場での地位を脅かす存在となっている。

がん治療薬


レブラミド


レブラミドは通常、薬剤給付プランでカバーされており、民間保険のフォーミュラリーの約9割で「推奨」または「スペシャリティ医薬品」とされている。同薬は、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群の治療薬で、数回の薬価引き上げを経て、米国トップレベルの売り上げを維持している。同薬は、後発医薬品の発売が2026年に先送りされたあと、適応拡大の承認を取得した。今後もフォーミュラリーでの地位は安泰と思われ、高い収益を確保できるはずだ。

イムブルビカ


ほとんどすべてのフォーミュラリーに収載されているイムブルビカは、この6年間でFDA(食品医薬品局)から11の承認を取得した。慢性リンパ性白血病の長期治療薬として、今なお大きなシェアを維持している。しかし、カルケンスなどとの競争で、その地位が脅かされる可能性がある。

カルケンスと比べると、イムブルビカは「推奨」の位置付けのまま制限も少なく、収載されているフォーミュラリーの数も5%ほど多い。カルケンスは2019年1月以降、フォーミュラリーでのポジションを上げることができておらず、一部の民間保険のフォーミュラリーでは「推奨」から外されている。


キイトルーダ


キイトルーダは、幅広いがんを適応とするがん治療薬だ。競合薬が極めて少ない同薬は、医療給付プランや薬剤給付プランでほぼカバーされており、民間保険加入者の18%超が選択している。

競合薬の一つであるオプジーボは、フォーミュラリーでキイトルーダよりも有利なポジションを確保している。ただ、薬剤給付プランでカバーされる場合、事前承認などの制限はキイトルーダの方が少ない。テセントリクとイミフィンジは、キイトルーダの直接的な競合になると予想される。

フォーミュラリーは、理論的には薬剤へのアクセスを決定づけ、薬剤の利用に伴う売上高にも影響を与える。今回分析した5つの薬剤はいずれも、フォーミュラリーでのポジションと使用管理が米国市場での存在感の基盤となっている。スペシャリティ医薬品や新薬の費用が上昇すれば、使用の監視やフォーミュラリーの策定に対する注目も大きくなるだろう。

(原文公開日:2020年12月22日)

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com

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