ブリストル・マイヤーズスクイブが医薬品の情報提供にLINEを使うワケ

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新型コロナウイルスの感染拡大も背景に、デジタル化が進む医療用医薬品の営業現場。そうした中、医療従事者への情報提供に、コミュニケーションアプリ「LINE」を活用する製薬企業が増えています。昨年8月から公式アカウントを通じた情報提供を行っているブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)の宮本繁人デジタルマーケティング部門長に、LINEを採用した経緯や狙いを聞きました。

分散した情報を集約


――医療従事者向けのLINE公式アカウントでは、どのような情報提供を行っているのでしょうか。

製品に関する情報やセミナーの情報などを提供しています。情報自体はWebサイトに掲載しているものと同じですが、わざわざサイトを訪問して探さなくても知りたい情報に素早くにたどり着けるようにしました。コロナ禍で増えているWebセミナーもここから見ることができます。まずは固形がん領域からスタートし、2021年には血液がん、循環器、リウマチにも広げていく予定です。



BMSのLINE公式アカウントの画面(同社提供)

――LINEを採用したのはなぜですか?

公式アカウントの開発を始めた当時、BMSでは疾患や製品ごとに14のWebサイトを持っていました。日本でも今年統合を予定しているセルジーンも同様に12のサイトを持っていて、合わせると26ものサイトを持つことになります。情報が分散しているため、医師からは「どれを見たらいいのかわかりにくい」との声があり、集約したポータルのようなものが必要なのではないかと考えました。

普通は自社でアプリを作ろうかと考えるところですが、医師に話を聞くと「アプリはこれ以上入れたくない」「新しいアプリを入れると操作を覚えないといけないので大変」といった意見が多かった。ならば、すでに多くの人に使われているプラットフォームに乗っかるのが一番いいのではないかと考え、仮説検証を行った結果、最終的にLINEが最もふさわしいと判断しました。

Webセミナーの視聴が増加


――医療従事者の反応はいかかですか?

「知りたい情報にスピーディにたどり着ける」「業務の合間にサッと情報収集できてありがたい」といった声をいただいています。LINEは院内で医療従事者間のコミュニケーションに使われることも多く、その中でパッと欲しい情報にアクセスできるのがいいようです。

実際のユーザーを見てみると、医師だけではなく、薬剤師や看護師、臨床検査技師など、さまざまな職種の方に使われている。メディカルチーム全体として使っていただけているのがすごくいいなと思っていますし、われわれとしても、今まで見えていなかった医療現場がデータで見えるようになったのは大きいですね。

――具体的にどのような成果が出ていますか。

LINE公式アカウントからWebセミナーを視聴する医師が増えています。コロナ禍で相当な数のWebセミナーが開かれていますが、多すぎるがゆえに「自分が見ようと思っていたセミナーを忘れてしまう」という医師も少なくありません。LINE公式アカウントは、スマホでお知らせからワンタップですぐに見られる点が好評で、われわれからすると競争性の高さにつながっている。Webセミナーもコロナによって個人で視聴する医師が増えており、そういうスタイルにLINEがマッチしたのではないかと思っています。

MRに代わるものではない


――BMS以外にも情報提供にLINEを活用する動きが出てきていますね。

かつては各社が自前のアプリを作ってインストールしてもらおうと努力していました。しかし今は、カスタマーエクスペリエンスをより重視し、すでに顧客が慣れ親しんでいるアプリに対して情報を提供していこうという方向にスイッチしているタイミングなのかなと思っています。

われわれがLINE公式アカウントを開発している最中にコロナの感染が広がり、MRが対面で情報提供を行うことが難しくなりました。コロナは後から加わった外的な要因になりますが、非接触型の情報提供の重要性が高まったことも、結果的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進させる大きな要因になったと考えています。



BMSの宮本繁人デジタルマーケティング部門長(同社提供)

ニーズに応じて選んでもらえる状況をつくりたい


――LINEによる情報提供はMRに代わるものなのでしょうか。

公式アカウントの開設を発表したときも、同業他社の方からよく聞かれました。「これでMRはいらなくなるんですか?」と。ただ、われわれの戦略はまったく逆です。いわゆるOMO(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインの融合)の中で、営業の生産性を高めるものとして位置付けています。

われわれとしてはタッチポイントをもっと提供したいんですね。コロナで物理的な訪問ができなくなり、さまざまなタッチポイントを検討する中で気付かされたのは、個々の医療従事者によってニーズが全然違うということ。朝見たいという人もいれば、夜勤の合間がいい人もいるし、電車の中で見たいという人もいる。パッと見られるものがいい時もあれば、深い理解やコンサルテーションには対話が必要です。

1つのソリューションですべてをカバーするということではなく、情報提供のジャーニーの一部をLINEで埋めることができればと考えています。大事なのは、医師が何か知りたいと思ったときに、いろんなオプションがあるということ。その中から、ニーズに応じて医師に最適なものを選んでもらえるような状況を早くつくりたいと思っています。

――LINE以外にデジタルを通じた情報提供として考えていることはありますか?

今回のLINE公式アカウントは、情報提供の新しいチェネルを1つ作ったというだけで、決してゴールではありません。これを皮切りに、さまざまなソリューションやコンテンツを提供し、エコシステムを作り上げていきたいと思っています。

BMSでは現在、MSLとソートリーダーの医師がLINEを使って双方向にコミュニケーションできるサービスや、オンラインでサイエンティフィック・エクスチェンジができるような場の開発を進めています。2020年12月には、抗がん剤「スプリセル」を服用している慢性骨髄性白血病患者を対象に、服薬状況の管理などができるLINE公式アカウントも開設しました。

ほかにも、AR(拡張現実)やMR(複合現実)を使ったものも考えていますし、VR(仮想現実)の活用も含め、いろんな可能性を探っているところです。

(聞き手・前田雄樹)

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