医療物資のサプライチェーン、見直しの4つのポイント|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 コロナ禍で脆弱さが露呈した医療物資のサプライチェーン。世界中で見直しに向けた動きが見られますが、その4つのポイントを整理しました。

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

新型コロナで脆弱さ露呈


世界各国の医療システムは、新型コロナウイルス感染症による大規模かつ長期間にわたる医療物資の供給途絶と不足に対し、十分な備えができていなかった。在庫管理がリアルタイムではなく、一定の間隔で行われる傾向にあったことが大きな原因だ。

さらに、地域やサプライヤーが限られており、1つの国(多くは中国)に過剰に依存していたことも問題を大きくした。他業界よりデジタル化が遅れており、サプライネットワークの管理や需要分析を自動化できていないことも課題で、突然の需要の変化や輸出入の停滞によって、特に大きな打撃を受けることになった。

コロナ禍の中、サプライチェーンの柔軟性を向上させるため、業界では主に4つの取り組みが進められている。

1.テクノロジーによる予測・管理


人工知能(AI)は正確な需要予測と確実な製品調達を手助けし、サプライチェーンのあり方を変えつつある。例えば、英ロンドンを拠点とする医療系企業Vamstarは、AIプラットフォームを導入しており、これによってサプライヤーは購買決定の多くの情報を得ることができるようになったし、欧州の病院の過去の購買傾向に基づいて供給リスクを特定することができるようになった。



ブロックチェーンを活用し、サプライヤーの選定にかかる時間を短縮しようとする取り組みも進んでいる。IBMが立ち上げた「ラピッド・サプライヤー・コネクト」は、ブロックチェーンに対応したプラットフォーム。サプライヤーの選定を迅速に行い、政府機関や医療機関、サプライヤーの間で1つのネットワークを共有することが可能だ。こうしたシステムは、同じ台帳を共有して取引を監視・記録することで、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティ、効率を高める。

3Dプリンターは、一部の医療機器や部品の内製化を可能にし、サプライチェーンの柔軟性を向上させている。例えば、Prisma HealthとEthiconは、パンデミックの初期段階で協業し、3Dプリント技術を使って10日足らずで人工呼吸器接続用の三方コネクターを製造・発売した。

2.電子調達


電子調達によって医療機関は納入業者と直接やりとりできるようになり、必要な場合は一般入札に要する時間を省くことができる。このようなシステムでは、代替業者の紹介も行われ、購入者側はいち早く物資不足を解消できるようになった。多くの電子調達プラットフォームは、医療物資の不足を予測する機能を備えており、製造業者の生産能力管理に役立てられている。

ソフトウェア企業のResilincは、StanfordHealthcare、PremierGPOと提携し、「ザ・エクスチェンジ」という電子調達プラットフォームを構築。病院はこの物々交換のシステムを通じ、医療物資を融通し合ったり、共有したりすることができる。製造業者や販売業者、共同購入組織(GPO)が物資を寄付することもでき、病院はそれをプラットフォーム上で入手することができる。



Adverted(米国先進医療技術工業会)は、米国航空宇宙工業協会、グーグル、そして様々な分野の企業50社とともに、電子調達プラットフォーム「Vent Connect」を立ち上げた。メーカーはプラットフォーム上で販売業者やサプライヤーの候補とつながることができ、その結果、必要な場所に必要な物資を確実に届けることができる。

イタリアの「Federation of Associations of Economics of Health Buyers」は、電子調達システム開発企業Net4marketと共同し、臨時の調達ポータルサイトを作成した。全国の医療機関は、国内企業が抱える医療物資の在庫を確認し、迅速に納品してもらうことが可能だ。

3.規制と政策


当局による規制緩和やベストプラクティスの共有、新たな責務の割当てが、供給障害の軽減につながっている。

国連と世界食糧計画は共同で「UN COVID-19 Supply Chain Task Force」を立ち上げた。その目的は、医療物資が不足している国に物資を調達し、供給することだ。世界保健機関(WHO)の「Supply Chain Inter-Agency Coordination Cell in Europe」は、優先度の高い物資をリスト化するのに役立つツールと、不足する可能性のある物資を予測するツールを構築した。

欧州委員会は「RescEU」という市民保護システムを通じ、ワクチン、医薬品、人工呼吸器、生体情報モニタ、PPE、診断ツールといった医療物資の備蓄先として、ドイツ、ルーマニア、デンマーク、ギリシャ、ハンガリー、スウェーデンの6カ国を選定した。備蓄担当国は、加盟国に対してこれらの医療物資を適切に供給する責任がある。

欧州の医療系GPO10団体で構成する「European Health Public Procurement Alliance」は、調達プロセスのベストプラクティスを構築するため、互いに協力して経験を共有している。そうすることで、どこで物資が不足しても、効率的な供給が保証されるだろう。特に、イタリアのGPOの経験は、ベストプラクティスを策定するための重要なケーススタディとなった。



緊急時の公共調達に関する法律を採択した国もある。米国やイタリアでは、医療機関が通常の入札プロセスを経なくても、どの納品業者とも直接取引できるようにしている。加えて、入札業者の選定プロセスを簡略化して調達を迅速化することで、調達プロセス完了までにかかる日数を短縮することに成功した。

4.防災計画


シナリオシミュレーションテストから新たな法律制定まで、各ステークホルダーが将来に備えるための措置を講じている。

医療機関では、在庫を効果的に分析・追跡するため、サプライチェーンを管理するテクノロジーの活用が進んでいる。需要予測の分析や、医療機関間でのリソース共有を目的とした緊急時の対応計画を策定する動きもある。

製造販売元や販売業者の間では、サプライチェーンの分散化と財務的なリスクを管理するための計画策定が進んでおり、アウトソーシングベンダーのレジリエンス(回復力)・プログラムを理解することも重要となっている。想定される混乱への備えを評価するため、さまざまなシナリオをシミュレーションしているし、ポリシーの免除基準を決定し、承認を迅速化するための危機管理プロセスを準備しているところもある。

各国政府は、緊急時に医療物資を確保するため、公的機関や民間企業との連携を強めている。米国の「Made in America Emergency Preparedness act」「CARES Act」や欧州の「Joint Procurement Act」など、製造とサプライチェーンの構築に焦点を当てた新たな法令を施行する国もある。

医療分野のサプライチェーンの専門家は「サプライチェーンにおいては、チーム全体(量産から配送まで)を考慮に入れたシナリオ策定とともに、確実な事業継続計画が極めて重要だ。それにより、不足の事態に備えた複数の選択肢を用意することができる」と話している。

(原文公開日:2020年11月20日)

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

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