リアルワールドエビデンスデータを希少疾患の開発にいかにして活用するのか?業界内の専門家の意見は?

希少疾患において増えるリアルワールドエビデンスデータ活用の機会

希少疾患の治療薬には非常に高い薬価が設定されます。そのため希少疾患の治療薬にはそれに見合う治療効果がしっかりと示されることが期待されます。特に価格や償還制度で重要な決定をする当局やHTA、そしてペイヤーにとっては、治療効果と対する適切な価格設定が重要であり、より高いレベルの治療効果を強く求めます。

その一方で希少疾患ゆえに実際に得られるクリニカルデータには限界があります。そのため、希少疾患の開発や販売をする製薬企業はリアルワールドエビデンスデータがより説得力のあるデータが提供してくれる事に大きな期待をかけています。このように希少疾患とリアルワールドエビデンス、価格と償還制度は密接に関わっています。

今回FirstWord Pharmaでは、希少疾患の治療薬の開発に携わる企業の為にリアルワールドデータの利用の実態を調査するために新たな市場調査を実施いたしました。本日は、この調査結果レポートの中から一部のインタビュー内容を日本語に翻訳、編集してご提供します。なお、本調査の結果は「希少疾患むけ治療薬の開発時におけるリアルワールドデータの活用と課題 Real World Data for Orphan Drugs: Meeting the Data Analysis Challenge」として発行、発売されています。

  • リアルワールドエビデンスデータはステークホルダーが実際に求めている情報を提供できているのでしょうか?
  • リアルワールドエビデンスデータは希少疾患の開発品・治療薬のライフサイクルのどのタイミングで活用するべきなのでしょうか?
  • 患者グループはリアルワールドデータの活用をどのように考え、期待しているのでしょうか?
  • 医師や専門家が治療方針、選択肢を選択するために使えるリアルワールドエビデンスデータとは何か?

リアルワールドエビデンスデータをマーケットアクセス戦略に活用

チーフメディカルオフィサー(CMO)を務めるUsman Iqbal氏 は以下のように希少疾患向けの医薬品のマーケットアクセス戦略にとってリアルワールドエビデンスの活用の重要性を説いています。

希少疾患においては、ペイヤー、医師によって薬価とその治療薬の価値に対する判断と評価がなされます。たとえ、承認された医薬品があるからといって、それらにすべての患者がアクセスできるわけではありません。

希少疾患に携わり、希少疾患市場において成功を収めたいと思う製薬企業はこれらのステークホルダーが何を求めているのかを理解しそれに応える治療薬を開発することに集中しなければなりません。そのための手段としてリアルワールドエビデンスデータの活用は非常に重要です。

リアルワールドエビデンスデータは、患者の方々にいま何が起きているのかを理解し、いかにして彼らが医師と繋がり、どのような治療を施されているのかを提供提供することで、ペイヤーがどのようにその開発品を位置づけるのかを理解するための強力なツールとなります。このデータを有効に活用することはマーケットアクセス戦略と製品評価を適切にすすめる事を可能にします。

長期間のリアルワールドエビデンスデータを活用してペイヤーの判断を支援

製薬会社の非常勤取締役兼コーポレートアドバイザーを務めているダミアン・マロン氏は、ペイヤーとのコミュニケーションと情報提供の中でもより長期間に渡るリアルワールドエビデンスデータによるエビデンスの活用の重要性を強調しています。

私の経験から、ペイヤーと良好な関係を維持することで、彼らは我々にガイダンスを提供してくれます。希少疾患においては、それらのいくつかはあまりにも厳密な技術の評価にこだわるあまり、有効なガイダンスと言えないことがよくあります。残念なが事に、特により希少な疾患になればなるほど、彼らのエンゲージも高まり、適切なガイダンスからかけ離れていく傾向も強くなります。
私は、適切でより長期に渡るリアルワールドエビデンスデータを活用して、ペイヤーに対してちょうどよいタイミングを見計らって、開発品の価値をしっかりとサポートする情報を提供し関係を維持し、ガイダンスを導き出すことが大切なのではと思います。このことでペイヤーはよりクリアな判断が可能となります。ペイヤーが「すばらしい薬」の利用を拒否することはペイヤーにとってもバツが悪いものである。やはり対立する関係より強調しているほうがうまく機能することが多いのだと思う。

希少疾患の開発にリアルワールドデータの活用

名前は公表できないとの条件で答えてくれた希少疾患部門において市場アクセスの責任者を大手製薬会社で務めているこの方は、希少疾患の開発においてはリアルワールドデータを活用して、通常より早い段階で情報を得るためのツールとして活用するべきと指摘しています。

リアルワールドデータは希少疾患の新薬を開発する際に、より早い段階から活用するべきだと私は思います。第1相の臨床試験をする場合、疾患に関する情報、疫学、治療オプションなど集められる情報を集めるべきですが、リアルワールドデータを活用することで通常は第2相で活用するデータも第1相の試験中に準備をするべきと私は考えます。これらの情報は、治療の効果や治療対象として適切と思われる患者のプロファイルなどが言えます。
希少疾患を対象として開発を進める場合、より早い段階で試験後半でつかるデータをルアルワールドデータを活用して準備することが出来ます。

治療オプションのより「head-to-head」に近い比較分析データに

欧州ベースのヤンセン社におけるグローバルマーケティング部門のディレクターは、多様化する治療オプションが存在する中でリアルワールドエビデンスデータがそれらの治療オプションの選択判断をするために必要な比較データを提供できると述べています。

私が特にいま必要ではないかと思う情報として、有効な治療オプションがいくつもある場合、リアルワールドデータを活用したこれらの治療オプションの比較分析情報だと思っています。現実では「head-to-head」の比較ではないものの、「head-to-head」試験と同じような比較データが得られることが期待されます。

希少疾患を含む多くの疾患では、複数の治療オプションがありますが、上記の目的のために、レジストリにリアルワールドデータが保管されることで、比較が可能になると思います。もちろん患者の特徴は異なるので常に同じ対象グループを比較することは出来ませんが、少なくとも治療の長さ、治療中止の情報などの情報は得られることが出来ます。QOLの比較はより難しいものの、比較は可能です。そして特にペイヤーが求める情報には、治療を施さなかった患者との比較、モノセラピー、コンビネーションセラピーの違いなどがあります。
私がペイヤーとの情報交換をする中で、このような治療オプションの「head-to-head」に近い比較情報へのニーズがより高くなっています。

まとめと参照資料ご紹介

いかがでしたか?
すでに多くの製薬企業では医薬品のライフサイクルのあらゆる過程においてリアルワールドエビデンスデータを活用していますし、多くのベンダーも存在します。
ここ数年でより治験での活用、価格戦略、経営戦略など企業の意思決定の場面でも頻繁に活用されています。

そのような中で、希少疾患においては、患者数や実際の治療オプションの少なさから臨床的なデータも非常に少ない中で、リアルワールドエビデンスが支えることが出来る可能性は大きいと考えます。一方、希少疾患への治療薬の迅速承認の指定や新薬としての承認が増えるものの、価格設定はそのたびに議論となります。

希少疾患において、製薬企業の開発へのモチベーションとリターンの担保から薬価に関しては今後も高値維持が続くことが予想されます。そのような中で当局や価格担当の当事者や保険会社は適切な価格設定の拠り所としてより正しく、現実的で、より説得力のあるデータをリアルワールドデータに期待しているものと思われます。

多くの企業が希少疾患の市場へすでに参入、参入を計画している中で、今後もこのリアルワールドエビデンスデータの有効な活用は重要な位置を占めていくものと思われます。

今日は、レポートから数名のインタビューの一部を翻訳、編集してInsights4がお届けいたしましたが、今回発行となったレポートの調査にあたっては、欧米の製薬企業の方、ペイヤーの方12名に40項目に渡る質問をインタビューして、今後希少疾患やリアルワールドエビデンスの活用を進めている方に示唆の富んだ情報を提供しています。
例えば、以下のようなリアルワールドエビデンスと希少疾患に関する重要な質問に関して回答をしていただいております。

  • 現在のリアルワールドエビデンスのデータおよび分析モデルの長所と短所は何ですか?
  • 主な情報源は何ですか?また、企業はどのようにしてデータの信頼性を確保していますか?
  • データ分析、マシーンラーニング、AIの進歩が与える影響は?
  • 目的を達成するために適切なタイプのデータを収集および分析するために重要な社内機能は何ですか?
  • リアルワールドエビデンスは、実際に製薬会社が患者グループをよりよく理解し、結果を改善するのにどのように役立ちますか?
  • 早い段階で患者支援グループと提携することの利点は何ですか?
  • 希少疾病用医薬品の規制当局の承認をサポートするためにリアルワールドエビデンスはどのように使用されていますか?

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タイトル 希少疾患むけ治療薬の開発時におけるリアルワールドデータの活用と課題
Real World Data for Orphan Drugs: Meeting the Data Analysis Challenge
発行日 2020年9月
発行会社 Firstword Pharma社
シングルユーザー価格 3,295ドル
複数ユーザーライセンス 7,995ドル

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